「口紅」使ったことがあってもなくても、知らない人はいないもの。化粧品販売コーナーで、必ず見かける製品。そのうえ、TVCMなど広告も多いため、目にしたことはあるだろう。
一般的によく見られる棒状の「口紅」は、もとは西洋から来たもの。それとは別に、日本にも古来から伝わる「紅(べに)」がある。「紅」とは、紅花から色素を取り出した日本の伝統的口紅。
しかし、日本古来の「紅」を作っているお店は、今ではたった1軒のみ。日本で唯一の紅屋・伊勢半本店では、紅の体験だけでなく、紅の歴史について知ることができる。
本日の訪問先
『伊勢半本店』
「紅」を作っているだけでなく、『キスミー(Kiss Me)』という化粧ブランドを展開している会社でもある。
場所は、南青山骨董通りに面しており、表参道駅とは反対方向に位置する。
紅ミュージアム
伊勢半本店1階に、紅ミュージアムが併設。紅の歴史と文化、江戸時代の化粧道具など展示されている。
サロン
中に入ると、サロンになっている。サロンでは、実際に「紅」を体験することができる。
「紅」は、西洋口紅と違い、油分が入っていない。そのうえ、自然の物だけで作られているので、お肌にとても優しい製品になっている。
そのためアレルギーのある人でも、「紅」だけは大丈夫という人もいるので、ここでは気軽に試すことができる。
サロンの奥へ進むと、ミュージアムになっている。
ミュージアム内は、撮影禁止であったため、内容をご紹介!
紅について
紅と紅屋の歴史
中国から3世紀頃伝来したといわれる紅は、 平安時代(8世紀から12世紀まで)にはすでに口紅として、現代と同じような使い方がされていた。
東京に、最後の紅屋があるので、関東地方で紅が作られ始めたのかと思う人が多いだろう。しかし、紅は、もともと都のあった京都を中心につくられていた。そのため、「京紅」とも呼ばれていた。
紅で化粧をする文化が広がるにつれ、江戸でもつくられるようになった。そして、1825年に伊勢半本店が、現在の日本橋小舟町に創業した。
上質の紅は、小野小町(絶世の美女とされる人物)から「小町紅」と名付けられ、江戸中の女性の憧れになっていた。そういったことから、上質の紅は、g当たり金(きん)以上の価格で取引されることもあったという。
近代に入ると、紅の需要は減少し、多くの紅屋が廃業していった。そして現代、紅を製造している紅屋は、伊勢半だけになった。
本物の紅花
黄色い花びらをしている。
どうやって紅を抽出するのか?
紅の花びらを手摘みで収穫(山形県産)
→もみ洗いして黄色の色素を流す
(黄色の色素は、水に溶けやすい)
→日陰で発酵
→煎餅状に形を整え、天日干し(紅餅の完成)
→紅屋が、紅餅から紅を抽出 (職人の技)
抽出した紅、その後は?
抽出した紅は、器に塗り乾燥させる。
純度が高ければ高いほど
綺麗な玉虫色になる!
不思議なことに、赤色ではない。
不純物が入っていると、このような玉虫色にはならない。
(玉虫色のことを、笹色ともいう)
なぜこのような玉虫色になるのか?
現代の科学をもってしても、完全には解明されていない。
仮説として純度が高い赤い色素ゆえに赤い光を吸収。すると、赤の反対色である緑色が輝きを放ち、乾燥すると玉虫色になるのではといわれている。
まとめ
紅というものが、古来より人々に親しまれていたことを学ぶだけでなく、実際に体験できる場にもなっている紅ミュージアム。
今日では、たった2人の職人によって、紅はつくられている。それだけ紅の抽出は、高度な技術が必要であり、非常に難しい。
高純度の紅を塗って乾燥させると、玉虫色に変化する。それだけでも驚きだが、なんと紅は、人によって色が変化する。紅は、地肌に馴染んだ色味になるためである。塗った後の仕上がりが、たとえ親子や姉妹であっても、全く違う。
もし気になる方は、人それぞれの色をうつし出す紅を贈り物にいかがだろうか。ただ貴重な品のため、お値段が張るので、懐具合と相談して。(30回程使用できるもので、約1万円)
伊勢半本店 紅ミュージアム
開館時間:10時から18時まで
休館日:年末年始、毎週月曜日
(月曜が休日の場合、翌日休館)
※2019年8月5日から同年11月1日まで、リニューアル工事のため休館
入館料:無料
電話番号:03-5467-3735
住所:東京都港区南青山6-6-20
(K’s南青山ビル1階)
各線「表参道駅」(B1出口)より徒歩12分
併設カフェ:なし
併設ショップ:あり、紅関連商品多数
写真撮影:ミュージアム内はNG、サロン内はOK
イベント:日本の伝統技術を伝える講座、子供向け自由研究など開かれる
公式サイト:
http://www.isehanhonten.co.jp/museum/index.html
地図: