鳩谷由紀夫、内閣総理大臣に就任したこともある政治家。その人物の旧宅が、文京区にある。
東京メトロ有楽町線「護国寺駅」から音羽通りを歩いて、「江戸川橋駅」の方へ。途中、左手に見慣れた名字「鳩山」の表札をみかける 。この名前から、あの「鳩山家」なのかと脳裏に浮かぶ。正解である!
表札と「鳩山会館」という看板があるため、いったい何なのかと初めて前を通った人なら疑問を抱くだろう。実は記念館のようになっており、一般の人でも見学できるようになっている。
本日の訪問先
『鳩山会館』
鳩山家といえば、鳩山由紀夫を想像する人が多いかもしれない。2012年に「由」紀夫から「友」紀夫に改名宣言したことで話題にもなったため。
しかし、この邸宅を建てたのは鳩山一郎、由紀夫の祖父にあたる人物である。設計を手掛けたのは、一郎の友人である岡田信一郎。
建物がつくられたのは大正13年(1924年)。鳩山一郎の死後、老朽化していた建物を大幅に修復し、1996年に開館。
入口は階段になっており、玄関わきの注意書きの数に驚いた。まず、「床が木彫のため、下駄、細いハイヒールの方はスリッパに履き替えて頂きます」。これは、理解できる。
「特殊なファッション、メイクをしての撮影禁止」「会館内で着替えをしての撮影禁止」「フィギア・人形及び小道具などを持ち込んでの撮影禁止」などなど。禁止事項が、たくさん書かれていた。これらから、過去にトラブルが多かったことをうかがえる。しかも、日本語で書かれているので、外国人向けではない。
だが、それだけ素敵な洋館であることの裏返しであろう!
期待に胸を膨らませ、いざ館内へ。
鳩山会館
中に入ると、美しい照明がお出迎え
入館券について
階段上がってすぐに、受付と券売機がある。この券売機、「東京チカラめし」と同じもの。「いらっしゃいませ」の音も同じ。これは・・・・。
前もって、鳩山会館のHPリンクから、前売りチケットを買っていたため、購入画面を受付に提示するだけ。前売りチケットを買うと、粗品としてポストカードをもらえるので、そちらの方が断然お得!(カードは、3種類から選べる)
また、券売機だと支払いは現金のみ。しかし、前売りチケットは、クレジットカードが使える。
会館1階
鳩山会館の1階は、和洋折衷のデザインになっている。各部屋は、日本の襖のような仕切りがある。仕切りを開けると、1つの大広間のようになる。
第一応接室
来客の控え室や、家族がお客様と面談する応接間として使用されていた。現在では、鳩山会館の案内映像を見る場所になっている。
第二応接室
アダムスタイルの装飾が施され、壁紙は絹製。(アダムスタイルとは、伝統的イギリス様式に古代ローマなどの装飾を取り入れた室内装飾様式)奥にある一際大きな椅子は、鳩山一郎愛用の椅子。
鳩山由紀夫の像
鳩山由紀夫
1947年、生まれ。一郎の孫にあたる。東京大学卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。政界入りしてからは、内閣総理大臣、民主党代表など歴任。
敷かれているカーペットの模様が、洋風でも和風でもなく中華風のようだ。詳しい説明は書かれていなかったが、この部屋にとても溶け込んでいたので、気になった。
食堂
岡田信一郎の教え子である梶田恵が設計制作した部屋。置かれている椅子は釘一本使われておらず、日本の伝統的な木組みと呼ばれる工法で作られている。
サンルーム
日光がふんだんに入り、四季折々の花が咲く庭を眺めることができる。(右側が、庭園)
他に1階には、特別展示室がある。由紀夫と弟・邦夫の実績や、季節ごとの企画展示が開かれている。特別展示室内は、撮影禁止になっている。
会館2階
もとは、家族の寝室があった。修復の際に、残されたところもあるが、大半は壁を取り除き大広間に変えた。
鹿のブロンズ像
階段を上がると、左手に目を見張る像がある。2階の西側壁に設置されていたもの。老朽化のため取り外し、文化財として保存している。現在、複製されたものが、元の位置に取り付けられている
大広間
3つあった寝室を、ひとつの大広間にした。撮影用の貸し出しも行っている。実際に、『花より男子』などドラマの撮影にも使われた。
床に置かれた白い機械は、加湿器である。特別な木組みの床のため、50%の湿度を保つよう管理されている。
大広間中央にある書は、鳩山一郎の絶筆(ぜっひつ)。書かれているのは、「和為貴」-和を貴しと為す-。孔子の教えである論語の言葉。簡単に解説すると、和こそがもっとも大切であるという意味。
他に2階には、一郎記念室、薫記念室、威一郎記念室がある。それぞれの実績・愛蔵品などが展示。(この3室内は、撮影禁止)
薫記念館は、畳のため靴を脱ぐので、ご注意を!
参考までに、3人の略歴をさらっと紹介。
鳩山一郎
鳩山会館である邸宅を建てた人物。1883年、東京都生まれ。東京大学卒業、弁護士として活躍。父親の死後、政界へ進出。文部大臣や内閣総理大臣等を歴任。日本とソビエト連邦の国交回復を実現。1959年、死去。
鳩山薫
一郎の妻。1888年、東京都生まれ。共立女子学園長を永年務めた教育者。1982年、死去。
鳩山威一郎
一郎の長男であり、由紀夫の父。東京帝国大学法学部卒業後、大蔵省に入省。退官後、参議院議員を務める1993年、死去。
庭園
2階からの眺め
左奥:鳩山一郎の像
左手前:鯉がいる池
池の手前には、写ってはいないが、鳩山和夫夫妻(鳩山一郎の両親)銅像がある。建造物が少なかった時代は、銅像の視線方向に国会と富士山が見えた。
右奥:収蔵庫
修復前は温室が建っていた。邸宅にあった資料を保管している。
庭園で一番インパクトのあった狸
庭園奥には、離れがあるが一般には公開されていない。
鳩山会館のステンドグラス
設計者岡田の教え子である小川三知が制作者。関東大震災や太平洋戦争によって、現存している作品は少ないため、価値ある品。
小川三知
1867年、静岡県生まれ。幼少の頃から、画家を志す。アメリカへ留学し、ティファニーなどの工房でステンドグラスの技法を学ぶ。大正から昭和初期にかけ、ステンドグラスを日本に広めた人物。
1階から2階への階段途中
法隆寺五重塔の摸しているといわれている。
玄関上部
鳩山家の名前からか、鳩がモチーフのステンドグラス
食堂
欄間のステンドグラス「ライチの実」
第一応接室
緑を基調とした透き通ったガラス
会館の外観
前述した、2階に置かれている像の複製。それと、鳩。建物4隅に、鳩がそれぞれ取り付けられている。
あいにくの天気であったが、南に面しているので日当たりは良い。そして、左右均等の建物。窓は引き戸でつくられ、和風の特徴になっている。つまり、左右に開くということ。洋風だと、上下に開け閉めする。
そして、屋根をよく見て欲しい。フクロウが4羽とまっている。残念ながら、本物ではない。
『豊島ふくろうみみずく資料館』の記事でも説明した通りフクロウは、知恵と学芸の象徴である。
まとめ
鳩山会館、鳩をモチーフにしたものを度々みかける。
鳩は、「ノアの洪水」の物語でも登場する。オリーブの枝をくわえていたので、洪水がひいたことが分かったのだ。どういうことかというと、洪水は神の罰であった。その罰が終わったことを知らせたのが、鳩。それゆえ、平和の象徴とされている。
そして、鳩山一郎が唱えた「友愛」。相互尊重・相互理解・相互扶助の三原則を、友愛主義と呼んでいた。
「友愛」「平和」「鳩山家」といったことから、鳩が多いのだろう。
話は変わるが、鳩山会館のパンフレットには、「バラとステンドグラス」と書かれている。ということは、その2つがお勧めということ。ステンドグラスはいつでもあるが、バラは季節によって咲いていたりいなかったりする。
そのため、鳩山会館を訪れるなら、バラの季節が良い!
春のバラは、「5月下旬から6月上旬」。秋のバラは、「10月中旬から11月上旬」。公式HPにも、バラ情報はのっている。もし見頃かどうか気になる人は、問い合わせするのが確実。管理されているスタッフさんが、丁寧に教えてくれる。
最後に、前述した注意書きについて気になる人へ。マナーの徹底が行われているようで、私が訪れたときは問題なかった。だから、ご安心を!
鳩山会館 基本情報
開館時間:10時から16時まで
休館日:月曜(祝日の場合、開館)
※1月・2月・8月は、休館
入館料:大人600円 シルバー500円 障害者・学生400円 小中学生300円
電話番号:03-5976-2800
住所:東京都文京区音羽1-7-1
有楽町線「江戸川橋駅」(2番出口)より徒歩7分
有楽町線「護国寺駅」(5番出口)より徒歩7分
入口は、音羽通り沿い
駐車場:あり(2台分)
併設カフェ:なし
併設ショップ:あり、受付でポストカードや図録など販売
WiFi:なし
サービス:パリアフリー対応していない(事前予約をお願いしている)、エレベーターなし、貸し出し用車イスあり
公式サイト:http://www.hatoyamakaikan.com/
地図: