東京の三大女子大というと、どこの大学を想像するだろう。諸説あるが、「日本女子大学」「東京女子大学」「津田塾女子大学」 の3校を指すことが多い。
中でも「日本女子大学」は、日本で初めての女子大学である。創設者は成瀬仁蔵(なるせじんぞう)、キリスト教の牧師であり、日本にバスケットボールを初めて伝えた人物。
牧師と神父、いったい何が違うのか気になった人もいるかもしれない。簡単に説明すると、どちらもキリスト教だが、教派が違う。牧師はプロテスタント、神父はカトリック。
そんな成瀬仁蔵の記念館が、日本女子大学目白キャンパス内に開設されている。
本日の訪問先
『成瀬記念館』
名称の通り、創設者の記念館である。成瀬仁蔵に関する資料や、大学のために集めた蔵書など展示されている。
成瀬仁蔵について
1858年、現在の山口県山口市に、長州藩下級武士の長男として生まれる。姉以外の肉親を、病ですべて失う。これが後の人生に大きな影響を与える。
1877年、郷里の先輩・澤山保羅と出会う。(澤山は、日本で初めて牧師になった人物)感銘を受けた成瀬は、澤山を追って大阪の浪花教会へ行き、洗礼を受けた。
大阪へ出たあと、成瀬は女子教育の道へ進む。梅花女学校の主任教師となるが、キリスト教伝道に専念するため辞職する。
奈良、新潟へ赴任後、アメリカ留学。
1894年、日本に帰国し、梅花女学校の校長となる。そして同校の生徒にアメリカから持ち帰ったバスケットボールを使って指導した。(日本にバスケットボールが初めて伝わった出来事)2年後、女子大学設立を目指すため辞職。
そして三井家から寄付された目白の土地に、1901年『日本女子大学』を創立。
1912年、帰一協会を組織。諸宗教・道徳を、相互理解し、同一の目的へ協力し合う組織である。
1919年、死去。
館内について
「正五角形を組み合わせた照明」、「人々が両手をあげて支え合う姿を表した階段手すり」、「学園の四季と宇宙を表したフレスコ画」、「ステンドグラス」など目をひくデザインが来客を楽しませてくれる。館内は撮影禁止であったため、お見せできないのが残念である。
建物自体があまり大きくない。2階建てにはなっているが、展示は2階のみ。そのため、こじんまりとしている。
成瀬仁蔵の像や愛用品が展示されている。一角には、企画展示も開かれている。学園史を中心にした内容で、年4回程テーマを変えている。氏が集めた、ずらっと並んだ古い蔵書コーナーが印象的であった。
記念館外観
1984年に完成した赤レンガの建物。半円アーチや厚い壁が特徴のロマネスク調になっている。
設計者は、浦辺鎮太郎。他に、倉敷市庁舎、神奈川近代文学館、倉敷アイビースクエアなど手掛けている。
正面入り口
「成瀬」は、創立者が自ら書いた文字をもとに作られた。
窓上のひさし
「人と人とが対面し、語り合う姿」とのこと。説明を読む前は、波に見えた…。
成瀬記念館分館
名称は分館になっているが、実は、成瀬仁蔵の住宅である。記念館の隣に併設されている。
1901年に教師用の住宅の一つとして建設されたが、成瀬仁蔵が死去するまで居住していた。
創立時から残る唯一の建物。
当初はキャンパスの北西隅にあった建物を、道路の拡張工事のため、現在の場所に移築した。
建物内を見学するには、予約が必要なよう。
帰一の精神
何かなと思った、あなた。私も「何だこの幾何学模様は」と疑問を抱いた。よくよく見ると、校章の一部である。(実際の校章は、この丸い部分を桜と楓で囲んでいる)
複数のマークが組み合わさり、創立者の「帰一の精神」を表している。「帰一」とは、様々なものがひとつになること。
それぞれの印の意味をみると、「〇:神」「+:本体」「◇:人間性」「△:三位一体」「卍:宇宙の本体」となっている。また「正」「止」「歩」の文字は、それぞれ「動」「静」「進歩」をさしている。それら、全てを包含したシンボルになっている。
成瀬記念館の入口上部にも、同様のマークをみることができる。
成瀬仁蔵が中心であった帰一協会の標語は、「階級、国民、人種、宗教の帰一」であった。
このことからも分かるように、「帰一の精神」とは人種、宗教、思想の枠組みを超え、お互いを理解・尊重し、互いに助け合う精神のことだろう。
その一体感のもと、より良い社会創造を考えたのではないか。
まとめ
日本女子大学目白キャンパス内にある成瀬記念館。女子大学のため、ふらっと入れるのか不安になった。しかし、御用の方は警備員室へと表記がある。
警備員室へ行くと、あっさり「どうぞ」といわれ拍子抜けだった。気兼ねなく入れる様子、成瀬記念館については。
警備員室のすぐ奥・左手だからかもしれない。
そして、記念館の展示内容については、広さの関係上仕方ないかなと思った。すぐに見終わってしまうので。
建物の外観や内装は、とてもこだわっている。だから、個人的には、そちらのほうが見ていて面白かった。豪華絢爛というわけではなく、このような凝った装飾の建物が増えると、見る者の心に新たな気づきを与える。
「凝った装飾」→「人々の心に違う面、新たな面を気づかせる」→「固まった見方・考え方を溶解」といった具合。
そうすれば、互いを尊重しあうことができるようになり、「帰一の精神」がもっと広まるだろう。
デート向き ★☆☆☆☆
こども向き ★☆☆☆☆
外国人向き ★☆☆☆☆
(5段階評価、★が多い方が向き)
日本女子大学成瀬記念館 基本情報
開館時間:10時から16時30分まで(土曜は、10時から12時まで)
休館日:日曜・月曜・祝日
入館料:無料
電話番号:03-5423-7255
住所:東京都文京区目白台2-8-1
(日本女子大学目白キャンパス内)
JR山手線「目白駅」より徒歩15分
駐車場:なし
併設カフェ:なし
併設ショップ:あり
図書コーナー:あり
公式サイト:
http://www.jwu.ac.jp/unv/facilities/naruse_memorial/index.html
地図: