1653年創業の紙問屋「小津史料館」中央区日本橋

 

日本の伝統でもある和紙。日常的に使うことは、少ないだろう。書道のときに使う紙や、和室の障子(しょうじ)に使われる紙が、和紙である。

 

江戸時代から続く、和紙を専門的に取り扱う紙問屋「小津和紙」が、東京の京橋にある。そして、江戸時代の国学者「本居宣長」や、映画監督の「小津安二郎」と縁がある。

 

老舗の紙問屋と聞くと、日本の伝統家屋のようなお店を想像するかもしれない。昔はそうであったが、今は立派なビルになっている。そしてビルの中には、創業からの歴史を知ることができる史料館が開設されている。

 

本日の訪問先

小津史料館

『小津史料館』(小津本館ビル3階)

 

史料館には、中央区民有形文化財に指定された文書など、小津和紙に関する資料約1000点が順次展示されている。

 

参考までに、ビル内は以下のようになっている。

 

1階:店舗と手すき和紙体験工房

工房では、有料で予約優先だが、A4サイズの手すき和紙作製を体験できる。また、様々な種類の和紙がそろっており、買うことができる。

 

2階:小津ギャラリーと文化教室

ジャンルを問わない作品の展覧会があり、書道、茶道など様々な分野の教室が開講。

 

3階:小津史料館と小津和紙照覧

小津和紙照覧とは、各地の和紙が展示され、和紙の歴史や作り方など解説。また、はがき・しおり・メモ帳・からくり屏風の有料手作り体験コーナーもある。

 

 

小津史料館

小津和紙

 

展示内容について、 もちろん小津和紙の歴史が主になっている。しかし、無知のためなのか、内容が理解しづらい…。(後述するが、小津家の姓が登場人物に多いのも理由かと思う)

 

個人的には、小津和紙の歴史そのものより、逸話の方が興味を抱く内容であった。

 

その話の前に、小津和紙の略歴をご紹介!

 

1653年、小津清左衛門長弘が、現・小津本館ビルの場所に、紙問屋小津左衛門店を創業

 

1868年と翌年、11代目である清左衛門長柱が、明治政府の様々な要職につく(商法会所・元締頭取、会計官為替方・元締頭取、通商司為替方・頭取、東京為替会社・総頭取)

 

1929年、合資会社小津商店を設立

 

1978年、商号を株式会社小津商店に変更

 

 

<其の一>本居宣長との縁

本居宣長(もとおりのりなが)は、松坂本町の小津家生まれ。その曾祖父である小津三郎右衛門から融資をうけて、小津和紙が創業。小津和紙・創業家と血縁はない。

 

なぜ小津家生まれなのに、本居という姓なのかと思われるだろう。それは、先祖の姓である「本居」に戻したからである。

 

どういうことかというと、宣長の先祖を遡ると姓は「本居」であった。しかし、先祖が松阪へ移り住んだ際、姓を「小津」に改めた。そして宣長は、先祖の姓である「本居」にしたということ。

 

 

<其の二>江戸時代、松阪に小津姓が多いわけ

本居宣長の『家のむかし物語』によると、油屋源右衛門という人物が松阪近郊の小津村から松阪に移り住み、「小津」という姓を名乗った。

 

それから、松阪では、「小津」を家名にする人が増えたとのこと。

 

また、「小津」の姓の人には、商売を営む人が多かった。

 

 

<其の三>小津安二郎との縁

展示資料によると、小津安二郎は、小津和紙・深川東京支店の支配人の子孫であった。

 

奉公し、その功績から、小津の苗字をつかうことを許された。そして、小津清左衛門の別家(べっけ)となる。別家とは、分家とは違い、血縁がない。

 

といったことからも分かるように、小津和紙の創業家と血縁はない。

 

 

<其の四>風船爆弾

風船爆弾とは、太平洋戦争のさなか、日本軍が実戦投入した特殊兵器である。和紙でつくった大きな気球(爆弾がついている)を、偏西風に乗せてアメリカ大陸に到達させ、爆発後火災を起こす仕掛けになっている。

 

公的な記録には残っていないが、風船爆弾の研究は、1929年には既に始まっていた。なぜ分かるかというと、研究所から「紙について相談したい」という連絡が、小津和紙にあったからだ。

 

このように小津和紙は、風船爆弾開発当初から、和紙の開発に携わっていた。そして、材料である紙を納入していた。しかし、戦中に紙が統制されるようになってからは、組合が紙を納めるようになった。

 

 

まとめ

小津和紙

 

 

写真からも分かるように、小津和紙の屋号は「小津屋」だが、家印は「うろこきゅう」になっている。△の中に久がある「うろこきゅう」は、縁起の良いシンボルとされ、名称ではない。要するに、「屋号」は、店の名前で、「家印」は店のマークである。

 

この家印についても逸話がある。創業当初は△の右上に、犬のような、「・」がついていたという。しかし、ある日訪れた老武士に、「運勢が悪いので、肩の星はとるべき」と教えられ、その日以来現在と同じ家印にしたと伝わる。

 

1653年創業と伝統ある企業のため、様々なエピソードがある。そのひとつひとつが、歴史の出来事になっている。そして創業以来、和紙の魅力を多くの人へ伝え、日本の伝統を後世に受け継いでいる。

 

東京では珍しい、和紙を作る紙すき体験ができるので、日本人だけでなく外国人にもお勧めである。けれど、小津史料館の解説は、英語対応がほとんどないので、内容の理解は難しいだろう。

 

 

小津史料館 基本情報

開館時間:10時から18時まで

 

休館日:日曜、年末年始

 

入館料:無料

 

電話番号:03-3662-1184

 

住所:東京都中央区日本橋本町3-6-2

(小津本館ビル3階)

各線「三越前駅」(A6出口)より徒歩5分

JR総武快速線「新日本橋駅」(5番出口)より徒歩2分

日比谷線「小伝馬町」(3番出口)より徒歩5分

 

駐車場:なし

 

併設カフェ:なし

 

併設ショップ:1階が店舗

 

サービス:エレベータあり

 

公式サイト:

http://www.ozuwashi.net/archives.html

 

地図: