東京理科大学、神楽坂に本部を置く私立大学。名称からも分かるように、理系が中心となっている。
歴史は古く、前身である「東京物理学校」を含めると、京都大学よりも早く自然科学の教育を行っていた。
伝統ある大学のため、夏目漱石の『坊っちゃん』にも出てくる。そして日本の私立大学として唯一、ノーベル賞受賞者を世に送り出した。
神楽坂キャンパスには、「数学体験館」と「近代科学資料館」があった。過去形になっているのは、「近代科学資料館」は休館したため。「数学体験館」は、開館している。
本日の訪問先
『東京理科大学』
建物は、東京物理学校の校舎外観を復元し、1991年に建てられたもの。 地下1階は「数学体験館」、1階と2階は「近代科学資料館」になっていた。
近代科学資料館は、2019年4月1日をもって休館。(野田キャンパスへ移転予定)
今回数学体験館だけでなく、休館した近代科学資料館も併せて紹介している。行ったことがある人は懐かしく、ない人はこういう場所があったんだと思っていただけると幸いである。
数学体験館
建物に入らず、すぐ手前の階段をおりるとたどり着く。
「名曲の楽譜を見ても、大半の人はそれに何も感じない。演奏された曲を聞くことによって感動する。美しい数式や理論を見ることは、それと同様である」
という考えのもと、数式や理論をはっきりと目に見える形で表現している。それらを五感で感じることができる施設になっている。
いったいどのような展示があるのか気になるところ。なので展示例は述べるが、詳細の解説については省く。なぜなら、ぜひご自身の五感で感じて欲しいので!
展示例
小雑貨の行商人パズル
正三角形を4つの断片に切り分ける。それらを裏返すことなく正方形をつくる問題。「カンタベリー・パズル」とも呼ばれる。
正四面体タイル定理
正4面体に適当な切込みを入れ、4頂点全て通るように切り開く。同じものを複数個作成すると、隙間なくお互いが組み合わさる。
対数螺旋
巻貝や、台風の時の渦の形など自然界には螺旋(らせん)がある。その螺旋を対数螺旋と呼ぶ。
最短ネットワーク問題
もし3箇所の点を、最短に結ぶにはどうすれは良いのか。簡単に考えるため、石鹸水を使う。数学的に証明は難しいが、石鹸水の膜は、空気の触れる面積を最小に張る性質があるので、正解のヒントになる。
たぶんこれだけだど、詳しくは分からないだろう。より知りたい人は、体験館へ行き、五感で感じて欲しい!
数学体験館・所感
小学生から大人まで楽しめるよう様々な体験道具がある。より多くの人が、数式や理論の素晴らしさに気付いて欲しいとという願いが伝わってくる。そして、理系の人口を増やすための活動であることも分かる。
だが、内容を理解するには解説が少々難しいものが多い。私見だが、ここにある展示を理解するには、ある程度の理系能力が必要ではないだろうか。
体験館を作った人や、中のスタッフさんの理系能力は非常に高いので、当たり前に感じるかもしれない。しかし、素人は、簡単ではないのだ。
理数系が得意ではない人達のために、もっと易しい解説を増やしてくれると非常に助かる!
近代科学資料館
ここからは、休館した近代科学資料館の紹介になる。
資料館・1階
「計算機の歴史」と「録音技術の歴史」の2つのテーマに分かれている。
〔計算機の歴史〕そろばん・計算尺
珍しいそろばんや算具が展示されている。「ヒスイ製そろばん」「鯨の髭そろばん」「孫の手そろばん」「ロールそろばん」など
そろばんと計算尺の体験コーナーもあり
初めて見たので「計算尺?」という感じだが、何だこれは???
説明を読むと、掛け算ができるようだ。なぜこれが発達し衰退したのか、良く分からなかった。電卓ができる前のアナログ式計算機にあたるのかな。
〔計算機の歴史〕機械式計算機
タイガー計算器などの機械式計算機を、実際に触って操作することも可能である。説明書きはあったが、難しい…(笑)
〔計算機の歴史〕大型計算機
『Bush式アナログ微分解析機』
世界に一つしかないオリジナル。大阪帝国大学に置かれていたものを、そのまま持ってきて修理し使っている。現在も修理中のため、右側手前から3番目の円盤は、まだ動いていない。
解説によると、積分法によって微分方程式を解くよう設計された機械式アナログコンピューターとのこと。
??? である(笑)
スタッフさんが実演してくれたのだが、??? である(笑)
貴重なものであることは、分かった!(笑)
〔計算機の歴史〕PC
懐かしいアップルコンピュータが置かれていた。
左側手前も、アップルコンピュータである。
〔蓄音技術の歴史〕アナログからデジタルへ
録音機械の変遷や、録音テープ(メディア)の変遷を解説している。
資料館・2階
2階は、東京理科大学の歴史について紹介されている。
前身である東京物理学校時代の資料が展示されている。
明治期の多面体研究者・菱田為吉による多面体模型
大村智コーナー(私立大学卒業生初のノーベル賞受賞者)
他に、日本人が作った世界初の乾電池や、東京理科大学の校章・校旗・校歌なども紹介されている。
近代科学資料館・所感
貴重なものが沢山あり、それが科学だけでなく、社会全体を進歩させてきたのはよく分かった!
ただリニューアル後は、展示解説を門外漢(もんがいかん)にも分かりやすいよう改善していただけると、一段と理解しやすいだろう。
例えば、Bush式アナログ微分解析機。それが何なのかという説明はある。そのうえ、実演もあるので、どういった機械なのか分かる人には分かるだろう。
しかし、「これが一体なぜ貴重なのか?」「歴史的にどういう意味があったのか?」そういった背景がほとんど分からなかったので、なぜ修理するのだろうと疑問を抱いた。
そういった解説があれば、より多くの人が理系の面白さを今以上に実感できる展示になる!
まとめ
東京理科大学は、理系学部が大半である。そのため、理数系の展示が豊富であった。特に、数学に関する展示が多い気がした。
両館とも、理系能力のレベルが高く、おいてけぼり感をじゃっかん感じた。そういった人のため、館内には学生スタッフを配置しており、自由に質問ができる。そして実際に触って学ぶ体験もできる。
「数学を五感で感じる」と「計算機の歴史」は他のミュージアムにない特色。こういったことから、好きな人にはとても好きな場所だろう。(計算機の歴史がある近代科学資料館は、休館中)
余談になるが、ただ大学が施設を運営しているのではなく、学生とともに施設を運営していく姿勢。それは、他の大学にあるミュージアムでは、あまり見られない。手作りPOPや、学生スタッフから、ふとそう思った。
数学体験館 基本情報
開館時間:12時から16時まで(土日は、10時から16時まで)
休館日:月曜、火曜、祝日、大学の休業日
入館料:無料
電話番号:03-5228-7411
住所:東京都新宿区神楽坂1-3地下1階
各線「飯田橋駅」より徒歩4分
駐車場:なし
公式サイト:
https://oae.tus.ac.jp/mse/taikenkan/
地図: