『きけ わだつみのこえ』という本を知っているだろうか。第二次世界大戦で戦没した日本の学徒兵の遺書を集めた本である。
学徒兵とは、学校に籍を置きながら戦争に参加した兵。学徒出陣の人達である。昭和18年、それまで動員されていなかった大学生や専門学生が、兵力不足により徴兵されるようになった。
その人たちの遺書を集め編集し、東京大学生活協同組合出版部(現・東京大学出版会)から1947年に出版された。現在では重版されていないため、岩波文庫版のものが手に入りやすいだろう。
そして、『きけ わだつみのこえ』の本に関連した記念館が、文京区にある。
本日の訪問先
『わだつみのこえ記念館』
「わたつみの悲劇を繰り返さない」という誓いを後世に伝えていく施設とのこと。
場所は少しわかりにくいが、歩いていると看板がみつかる
マンションの1階に記念館がある。
展示について
2階が、展示室になっている。
戦没学生の遺影
戦没学生の遺稿遺品展示
戦没朝鮮人学徒兵の遺稿と関係資料の展示
映像音声資料の視聴コーナー
といった具合に分かれている。
1階は、図書・資料コーナー。
スタッフの方がいらっしゃるので、何か質問があれば教えてくださる。
そして、気になった資料があれば、コピーすることもできる。
館内は、撮影禁止。
「きけ わだつみのこえ」とは?
直訳すると、「海の声をきけ」ということ。「わだつみ」とは、海の神という意味をもつ古い言葉で、転じて海という意味になる。
それでは「海の声をきけ」とは、どういうことか。言葉の奥にある意味を知るには、「きけ わだつみのこえ」の由来となった歌から理解するしかない。
その歌は、京都の藤谷多喜雄さんが考えたもの。
「なげけるか いかれるか はた もだせるか きけ はてしなき わだつみのこえ」
戦死した全ての人の声を、聞くように呼びかけた歌ではないかといわれている。
このように「きけ わだつみのこえ」とは、歌と同様、「戦死した人の声に耳を傾けよう」という意味。
遊就館の展示との違いは?
戦没学生の遺影と遺書について。
遊就館にも展示はあるが、わだつみのこえ記念館は、それ以外に、近親者や友人からの手紙、関係者・関係機関が作成した書類などの資料も保存され、戦没した方の人物像がより一層分かるようになっている。
それをどのように受け止めるかは、個人の自由である。
まとめ
『きけ わだつみのこえ』は、1949年に出版。
出版されてから、70年以上経つ。
太平洋戦争という出来事が、遠い遠い過去になりつつある時代。
館内で遺稿や資料を見ると、多くの戦没学生が20、21、22歳という若さで亡くなっている。
戦没学生の遺念を知り、それを平和な世界へつないでいく。
一人一人が平和な世の中へ、なにが出来るのか。
「わだつみのこえ」は、それを呼びかけた声ではないかと私は思った。
わだつみのこえ記念館
開館時間:13時から16時まで
休館日:火曜、木曜、土曜、日曜、祝日、年末年始、夏季休暇
(開館は、月曜・水曜・金曜)
入館料:無料
電話番号:03-3815-8571
住所:東京都文京区本郷5-29-13
(赤門アビタシオン1階)
各線「本郷三丁目駅」より徒歩9分
併設カフェ:なし
図書コーナー:あり(1階)、2階に視聴ブースもあり
サービス:車椅子用エレベーターあり(ただし事前の申し込み必要)
公式サイト:http://www.wadatsuminokoe.org/
地図: