桜の品種を思い浮かべると、「ソメイヨシノ」が1番に出てくる人が多いだろう。漢字で書くと、「染井吉野」となる。奈良県の吉野が発祥かと思いきや、江戸染井村で育成されたものといわれている。
江戸染井村は、現在の豊島区駒込あたりになる。かつてこの辺りには、植木屋さんが集住していた。大名屋敷の庭の手入れから始まり、それが次第に専門的な植木屋になったと考えられている。
その中でも丹波家は、代表的な植木職人であった。当時の面影はほとんど残っていないが、蔵と門のみ現存している。
本日の訪問先
『旧丹波家住宅蔵』
1936年に建てられた。植木屋である八代目丹波茂右衛門(たんばもえもん)は、九代目結婚の際に、木造の蔵を鉄筋コンクリート造りに建て直した。蔵は2階建て、地下には収納庫あり。現在では、国の登録有形文化財建造物に指定されている。
入り口
普段、蔵の入り口は閉ざされている。開かずの蔵だが、土・日・祝は開かれる。鉄製の扉には、丹波家の家紋(金色)がとりつけられている。
大理石
扉上部と両脇の柱には、高価な大理石が使われている。分かりにくいが、左から「蔵の壁」「大理石」「扉」「木の柱」となっている。
蔵の内部
小学生の図画工作作品展が開かれていた。蔵が目当てだと、中の様子が分かりづらい…。
見えているところからも分かるように、内装の保存状態は大変良い。当時の左官技術の高さをうかがい知れる。訪れたときには、気づかなかった。左手の展示板の奥に、2階へ行く階段があったとのこと。
蔵の中には、ボランティアの方が1名待機している。蔵について質問すると、色々教えてくださる。
蔵上部の瓦
丹波茂右衛門の「茂」が、瓦にも刻まれている。
折れ釘
蔵の外壁についている無数のL字型突起。「これは一体何だ?!」「何か引っ掛けるものなのか」「何かをぶら下げるためのものか」といった疑問を抱くだろう。
「折れ釘」と呼ばれ、屋根や外壁の補修や工事のときに使われる重要なパーツである。この釘に板などを通し、左官職人の足場としていた。
蔵の壁は漆喰(しっくい)のため、あとから釘を打つことができない。もし打つと、壁が割れてしまうため。それゆえ、将来的なことを考え、最初からたくさん設置しておくものらしい。
張り紙
蔵が開いているときは、このように張り紙がはられている。安心して中へ。残念ながらなかった場合、閉ざされた蔵になっているのであしからず。蔵が開くのは、原則土曜・日曜・祝日のみ。
旧丹波家腕木門
蔵とは別に、丹波家の門も現存する。豊島区指定有形文化財に指定。
腕木(うでぎ)と呼ばれる梁(はり)で屋根を支える形式の門である。津藩藤堂家下屋敷の裏門を移築したと言い伝えられている。
津藩:現・三重県津市に置かれていた藩
下屋敷:本邸とは別の家
まとめ
旧丹波家住宅蔵は、旧丹波家腕木門と敷地を含め、豊島区が所有している。そして、『門と蔵のある広場』として、地域の人々が集まる憩いの場である。
蔵は、内装だけでなく、大理石や瓦など外装も優美な建造物である。今回訪れたとき蔵の中では、展示が開かれていた。内装を知りたい人には、展示がない方が正直見やすい。
だが、豊島区と地元の団体との間で、蔵を地域活用していく協定が結ばれている。といった経緯から、定期的に地元の作品展が開かれているのだろう。
蔵そのものを詳しく知りたい人のために、解説や2階へ上がれる時もあるのかと気になった。けれど、そういった情報は見つからず…。どうなんでしょう???
それを抜きにしても、蔵の中はそうそう入れるものではない。近くを通った人は、立ち寄ってみてはいかがだろう。特に桜の季節はオススメである。
旧丹波家住宅蔵 基本情報
開館時間:11時から16時まで
※土曜・日曜・祝日のみ開館
休館日:平日
入館料:無料
住所:東京都豊島区駒込3-12-1
各線「駒込駅」より徒歩6分
駐車場:なし
併設カフェ:なし
併設ショップ:あり
図書コーナー:あり
イベント:あり、各種展示が蔵内で開かれる
公式サイト:
http://www.city.toshima.lg.jp/132/bunka/kanko/moyoshi/tsunen/020667.html
地図: